Wednesday, January 29, 2014

オリーブオイル栽培の「正の外部性」を考える

読者の皆様へ

 このページをご覧になっている皆様は、きっとオリーブオイルに深い関心をもっていらっしゃることと思います。ひょっとすると、サステナビリティ=「持続可能性」に興味をおもちなのかもしれません。あるいは関心のあるキーワドを検索されるうちに、このホームページへ辿りついたのでしょうか。   
 
 さて、それではなぜいま、持続可能なオイル栽培が関心を集めているのか、その意味をすこしずつ探っていきましょう。   オリーブオイルは地中海地域に太古から伝わり、神秘的な価値をもつと考えられてきました。古代ギリシャやローマでは、神々の彫像を清めるのにオリーブオイルが使われました。英雄やアスリートたちはオリーブオイルを体に塗り、ランプの燃料としてもこの植物性オイルが使用されました。ローマ人はあらゆる場所へオリーブオイルを輸出し、ローマ帝国の主要な産物になりました。カソリックの世界では、オリーブオイルとその樹が平和の象徴ともなりました。  今日、オリーブの樹は地中海域だけでなく、地中海域に似た環境をもつ地域であればそこかしこで栽培されています。例をあげれば、ギリシャ、イスラエル、イタリア、レバノン、モロッコ、パレスチナ、ポルトガル、スペイン、シリア、チュニジア、そしてその他の地中海に面する各国と、さらにはアルゼンチン、オーストラリア、チリ、パキスタン、アメリカ。最近では、ブラジルや日本でもオリーブ園の開拓に乗り出しました。    

 個人的に研究成果を参照しながら味覚を鍛え、良質なオリーブオイル(良質なオリーブオイルと呼べるのは“エクストラ・ヴァージン”略してevooのみです)の味を正しく認識することも可能ですし、オリーブオイルのボトルに付されたラベルを正確に見分ける術を身につけることも可能です。   
 しかし、味わうだけでは十分ではありません。私たちは環境汚染のリスクを減らし、経済学でいう「正の外部性」(positive externality)を生みだそうとする人たちの力になりたいと強く願っています。少し難しい言葉ですが、この「正の外部性」を簡単にいうと、生産のプロセスにおいて、経済的、社会的な副次的効果が生まれ、その結果ある共同体によい影響がもたらされることを意味し、それは金銭的価値のみに還元されるものではありません。  
 この「正の外部性」よりも頻繁に起こる現象に「負の外部性」(negative externality)がありまずが、これはある生産プロセスの過程で環境に悪影響を及ぼすことを意味します。「正の外部性」も「負の外部性」も中期的、長期的なスパンで起こり、その影響は人々の生活や安寧、さらにはその土地全域の生産性と資源に及びます。   
 「正の外部性」の実例は物理的であると同時に社会的な現象で、生み出された価値は一定期間を経て顕著になります。たとえばトスカナやアンダルシアの田園の美しい景観を思い浮かべてみましょう。この美しい田園風景のおかげで観光業が栄え、地元の人々は金銭を得ることができます。しかし、何世紀にもわたってこの土地を耕してきた農家の人たちは、最初から金銭的価値を見越していたのでしょうか。それとも彼らはただ仕事にいそしみ、よい生活を送ることを求めていたのでしょうか。また逆に、市民の間の結束力を損ない、その土地に伝わる伝統と価値を失わせる生産プロセスとはどのようなものでしょう。  
 ここで考えてみたいのは、「持続可能性」の定義を明確にして検証することです。一体どのような解釈が存在するのか、それは倫理性を問うものなのか、それとも政治的な正しさを問うものなのか、あるいはもっと単純な話なのか…。  皆さんに考えを深めていただくため、「持続可能性」のトライアングルを見てみましょう。




 このトライアングルに描かれている「持続可能性」の三つの要素――環境、経済、社会――は、私たちが自然や生活を守り、利益を追求することで、互いに結びつき様々な結果を生み出します。この三つの要素が数世紀にわたり結合してきたオリーブ栽培は、その可能性を試す素晴らしいフィールドなのです。

Thursday, January 3, 2013

世界市場におけるオリーブ・オイル需要の低下? いえ、国によっては需要がますます拡大しています。


 半年以上前になりますが、私たちは、ブラジル、中国、ポーランドそしてオーストラリアのオリーブ・オイル市場は苦境知らず、との見解を示しました。2011年度の最終データは、この半年で低下を見せたオーストラリア市場を除いて、この見通しを証明するものとなりました。では、2011年度の市場の趨勢を手短に振り返ってみましょう。

 2011年度は、オリーブ・オイルの世界的需要が9%高まり、45億ドルに達しました。しかし、世界の主要な買い手であるイタリア、アメリカ合衆国、フランス、ドイツがオリーブ・オイルに対する需要拡大の波に乗ったのに対し、スペインはこの3年の間に、イベリア半島を襲っている経済危機を理由に、買い手上位10位の座から姿を消し、11位に後退してしまいました。


 

 このランキングが示すように、中国市場が初めて2年連続で輸入量を増やし、2010年と比較すると72%上昇という驚異的な速度で成長しています。
 ところが、中国市場が「未来の市場」であることを強く打ち出しているのは事実ですが、いまだ世界市場全体の3%を占めているにすぎません。

 さて、ここからが本題です。もしオリーブ・オイルのビジネスで成功したいなら、いま注目すべき市場は、ブラジルです。
 そう、2011年の新星は間違いなくブラジルです。オリーブ・オイルの世界市場で買い手の順位第5位に輝き、今やその前を行くドイツに追いつく勢いで、とどまる様子をみせません。実際、2012年度も幸先の良いスタートをみせ、最初の2ヶ月で12.6%(前年比)の成長率を示し、その後も成長が続くとみられています。

 主にこの恩恵を受けているのはスペインとポルトガルの企業です。特にポルトガル企業は、ブラジルへのオリーブ・オイル総輸出額の半分を占めるに至りました。イベリア半島の経済危機は、競争国に新たな好機を与えていると言えます。今後のさらなる可能性から目を離すことができません。